Calendar

 
おわんの12か月

これはおめでたい、真っ赤なおわん。ふしぎなおわん。

どこからどこまで木でできたおわん。

森にかえりたいの? 今にもとんでいきそうだもの。

さあ、おいかけなくちゃ、12か月。足どりかるくね。

森でみつけた、ふしぎなおわん。うるしぬりのおわん。

どこからとんできたの? きずだらけ。ゆきが

ひらひらふってきて、おわんにこんもりつもったら、

ぷち、ぷつ、ぷち…これはきっと、

はじまりのおとね、そうなのね?

ふるぼけた赤いおわんから、ぱらんぱらんぽろん、と

音がして、あらわれでたのは、おかしなふたり。

おわんのふたをあけたなら、ひとりが、空にほうりなげ、

ひとりが、ふうっと息をふくと、ほうら緑がふきだした。

みるみるのびてひろがって、もうとまらないのさ。

“もう、はるだよ。はるだからね”

いつのまにできたか、おお! 野原。ノイチゴ、スミレに、

カラスノエンドウ、ノアザミ、ノギク、ハハコグサ。

畠にしようか、花と草のおみせでもひらこうか、

それともただねころんでいようか。エルバさんは

わくわくしながら、春のなかにたっています。赤いおわんの

おかげで、野原ができたなんて、おもいもしません。

エルバさんのお店は、木と草でいっぱい。

花瓶、花瓶、植木鉢、植木鉢、植木鉢、やかん、

ジョーロに帽子に……え、おわん!? これはこれは上等な。

うるしぬりの古い朱いおわん。なにげない顔をして、

どうしたの? ここで働いているの? ねえ、楽しい?

丹精こめた秘密の庭が、あかいおわんの中にございます。

おやおや? だれかしら。あたしの庭にはいりこんだのは。

ちょっとめをはなしたすきに。

まあ、かまわないけど、きをつけてやってね。

そこのマンネングサはとてもやわらかいから。

わたしのおわんはどこ!? 消えてしまったわたしのおわん、

傷だらけの古い古いうるしぬりのおわん。さがして

さがして、森の中。あのおわんはね、ただのおわん

じゃないのよ。たいせつなモノがはいっているの!

あ、あたしのおわん! 海にながれながれてきていたの。

あらら、おさかなさん、おきにめしたのはうれしいけれど、

そんなふうにくわえたら、きずだらけになっちゃうわ。

しおみずだらけの、きずだらけ。

だいじょうぶかしら。まだいきてるかしら。あたしのおわん。

あたしのおわんが死んでしまった。ああさみしい。

むちゃな旅をしたのね。ながいながい旅を。

でもきっとだいじょうぶ。こうやって、つちにうめてあげて、

おみずをあげて、あなたがふしぎなちからで

もういちど、よみがえらせてくれるから。

なった、なった、おわんのなる木だ。すずなりだ。

きずだらけのおわんを植えたら、はえてきたの。

さあ、とりいれだ。あのおわん、このおわん。

どれにしようか、あたしのおわん。

あかいおわんのなる木から、

みんなおわんをもらえたかしら?

さあ、これで新しい年をおむかえできる。

ひとりひとつで じゅうぶんよ、とりすぎはだめよ。

おわんのなる木は豊作で、ひとりにちゃんとひとつずつ、

それぞれのおうちにもらわれて、今年の終わりを待っています。

旅するおわん、芽の出るおわん、庭の入ったおわん。

不思議なおわんたち。

ひょっと、どこかで出会ったら、どうぞよろしく。

おわんの旅、12か月のおはなしでした。